外来がん治療専門薬剤師(BPACC)を取得の後転職しようか迷っている。あるいはすでに迷っていたりはしませんか?
転職を考えた時におそらく一番最初に考えたことは、「外来がん治療専門薬剤師(BAPCC)の手当が多くでる大手に行こうかな?」ではないでしょうか。
自分も最初は全く同じことを考えました!(笑)
ただ、お金がいっぱいもらえる!大手いこう!は後悔する転職に直結します。改めて大手調剤薬局に行くことが本当に良いのか解説し、皆さんの判断材料にしてもらえればと思います。
また、年収交渉に有用な伝え方などもご紹介していきますね。
外来がん治療専門薬剤師(BPACC)
まずは、外来がん治療専門薬剤師(BPACC)の役割や医療業界での必要性についておさらいしていきたいと思います。
スキップしたい方は、BPACC取得のメリット・デメリットに移動して下さい。
求められる役割
外来がん治療専門薬剤師(BPACC)に求められる役割については、日本臨床腫瘍学会(JASPO)によって明示されています。
さらに噛み砕くと、「がん薬物療法に対する知識を有し、治療による副作用のモニタリングとその対策について、医療機関と連携しながら対応できる薬剤師」という事です。
特に医療機関での30日間の実地研修もあるため、より医療機関と保険薬局間でのギャップを感じていることでしょう。
研修で感じたギャップを薬局内へ共有することも大切です!
専門医療機関連携薬局の設立に必要不可欠
専門医療機関連携薬局とは、がん患者などに対して通常の薬局では対応が難しいものでも高い専門性を発揮しながら対応する薬局のことです。
この認定を受けるには、外来がん治療専門薬剤師(BPACC)の在籍が必須です。
今回の診療報酬改定では、この専門医療機関連携薬局に対する加算は一つもありませんでしたが、高齢化によるがん患者の増加、治療方法や支持療法のエビデンス更新などにより、がん領域への専門性が必要となるため、間違いなく加算がつくでしょう。
「専門医療機関連携薬局」の話は間違いなくBPACC転職で必要なキーワードです!
大手に限らず、中小でもチャンスがあれば!と考えているため、転職を考えるなら必ず知っておくべき内容と言えるでしょう。
続いて、大手調剤薬局と中小の調剤薬局における転職ついても解説していきたいと思います。
大手調剤薬局への転職の利点は何と言っても手当!?
外来がん治療専門薬剤師(BPACC)に手当を出している大手調剤薬局の「日○調剤」「ア○ン」は月50,000円の手当を出しているのは皆さんご存じかとは思います。
希少な資格というだけではなく、今後の薬局業界に必ず必要となると考えているため、これだけの手当が支給されると考えるべきでしょう。
しかし、重要なポイントの一つとして年収60万円の収入アップは嬉しいでしょうが、大手調剤薬局あるあるの「給料が安い」問題を考えるともしかすると、中小と大きくは変わらない可能性もあるため転職を考える際には注意が必要です。
また、大手のデメリットの一つとして会社の意向で物事が進みやすいという事も考えなければいけません。
基本的には門前や敷地内薬局へ配置されることになりますし、配属先の選択肢はほぼないと考えておきましょう。また、店舗数が多いために、数年勤務したら別の店舗に移動。なんてこともよく耳にします。
「せっかく転職したのに、やりたい事がやれない。」とならないようにしたいものですね。
大手調剤薬局への転職は、メリットとデメリットを考えた上で選択するのが良いと言えます。
中小企業への転職でBPACCは役立たないのか
外来がん治療専門薬剤師(BPACC)を生かすなら大手調剤薬局!という認識が捨てきれない現在、中小の調剤薬局ではこの専門資格は役に立たないのでしょうか?
これは自身を持っていえます。答えはNo!です。
理由は単純で、専門医療機関連携薬局の認定は大手だけでなく、中小もチャンスがあればほしいと考えています。なぜなら今後必ず加算が付きますし、がん患者数が増える日本の現状を踏まえると会社的にもがん患者の対応に関する不安要素が減るからです。
残念ながら有資格者は大手に流れていくことが多く、外来がん治療専門薬剤師(BPACC)の取得に関する仕組み化が進んでいないのも現状です。その現状を打破するのは同じ資格を持つものだけです。
中小規模の調剤薬局への転職はそういった「教育」的な面で有利に働きますし、教育や仕組み作りに興味がある人にとってはとてもやりがいを感じられるものになるでしょう。
BPACC取得者が転職する際に考えるべきポイント
外来がん治療専門薬剤師(BPACC)取得者の転職は、一般の薬剤師と比べて優遇されるケースが多いです。そのため、転職活動は比較的スムーズにいくことが多いです。
だからこそ、きちんと考えて転職をしなければ、後悔してしまう可能性も十分ありますのできちんと抑えるべきポイントを把握していきましょう。
年収面の考慮
おそらく外来がん治療専門薬剤師(BPACC)で転職を検討する人の多くは年収をさらに上げたい!という人が多いです。
高望みではなく、自分が求める生活をするのにどの程度の収入が必要なのかをきちんと把握しましょう。年収が高い分だけ良いでしょ!?というのは大きな間違いです。例えば下記の条件だった場合あなたはどちらを選びますか?実際にこういう求人を見つけました。
- 年収650万円、休日120日
- 年収550万円、休日125日
年収だけを求めるのであれば間違いなく年収650万だと思います。でもそれであなたの求める生活が実現しますか?
子ども2人欲しい(教育費:約2,000万円、私立大学行くなら約5~6,000万円)、マイホームが欲しい(住宅費:約4000万円)、老後はゆったりと過ごしたい(老後資金:約3,000万円)と仮定したときに、少なくても約1億円の資産が必要になります。このほかにも結婚資金や旅行などもしたいのであればもっと将来的に必要な資金は多くなるでしょう。
年収650万円の月収は約54.1万円、手取りだと約38~40万円になります。そこから生活費などを引いてみてください。
仮に月の出費を永続的に20万円で抑えられたとして、定年までにできる貯金は約8,400万円(月の貯金20万×12か月×35年)ほどです。
全く足りませんよね。何を伝えたいかというと満足する生活をする上で重要なのは本職の年収だけでなく、積立投資や副業などによる収入の柱を増やす事です。
そのため、その投資などの資金に充てられる給料が得られれば良いわけです。
このように考えると年収550万円の手取りは約35万円と言われているので、同じように月20万円の生活をしたとして、月15万円も資金として使う事が出来ます。少なくとも月5万円を7%の利回りで積み立てN○saで運用すれば定年の頃には約9,000万円になっていると予想されます。
気になる人は積み立てNisaシュミレーションにて算出してみてください!
どうでしょう。それなら休みも充実している職場で働いていきたいと感じるのではないでしょうか?
キャリアプランの考慮
かといっても、25~65歳までの約40年というかなり長い期間、医療者として従事する方が多いと思います。
人生の半分ともいえるほどの時間、刺激がなく、やりがいも感じにくい職場で働くのは精神的に負担が大きいです。
想像しただけでゾワっとしますね💦
そこで年収面だけでなく、仕事をいかにやりがいをもってできるのかという視点で解説していきたいと思います!
がん指導の先頭に立つ
これは皆さんが一番イメージしている働き方だと思います。
BPACCを取得している薬剤師は全薬剤師約32万人の内わずか1,000人弱です。もっとイメージしやすくいうと全薬剤師の内たった0.3125%しかこの資格を持っていません。
そんなに少ないんですねっ!
外来がん治療の専門資格を生かし、地域のがん患者さんの指導に当たる重要な役割を担う事でしょう。
しかし、店舗によってはがん患者の多い少ないはあるようなので、働く場所によってはやりがいに大きく影響するでしょう。
また、がん患者が多すぎると指導するほとんどががん患者で。ということも発生しうるため、がん領域以外と接する機会が減る可能性もあります。
どのような地域で働くか、自分がどのような職場で働きたいかも重要だと分かります。
BPACC取得に向けた教育体制づくり
実は外来がん治療専門薬剤師(BPACC)のような希少な資格には、最前線を引っ張る!という以外にも道があるのはご存じでしょうか?
特に今後、専門医療機関連携薬局が加算の対象になることを見越して体制を整えていきたい、該当する薬局を増やしていきたいと考える企業は多くあります。
しかし、なかなかうまくできない状況でもあるのです。その理由は資格が希少だから外来がん治療専門薬剤師(BPACC)をどのように増やせば良いか分からないからです。
実際に専門資格を取得した本人が教育した方が効率が良いに決まってますよね。
でも資格を習得した本人なら、どのような対策をしたらよいかはっきり分かりますからね!
現場で最前線を引っ張るだけでなく、後継者を作るという目線でも転職を活動することで今後のキャリアをさらに広げる事が可能です。
- 人に教えるのが好き
- 専門資格に興味を持つ人の後押しがしたい
- 後輩や同僚が活躍している姿を見るのが好き
という人は「教育」の仕事も向いているのでおススメです。
大手企業では、すでに多くの外来がん治療専門薬剤師(BPACC)取得の体制が整いつつあるため、教育的な働き方やBPACC取得の仕組み作りをしたい!という人は中規模の企業への転職も大きなやりがいを感じることが出来るでしょう。
BPACC転職の年収交渉ポイント
転職を考える際の大きな理由は年収だと説明し、でも本業の貯金だけで将来必要な資金を集めることは出来ないとお伝えしてきました。
しかし、中には一生単位ではなく、まず今の金銭的な悩みを解決したい!という人も多いと思いますので、転職の際に使える年収交渉をする上でのヒントをお伝えしたいと思います。
同じ転職先でも、年収交渉をしているかどうかで収入に開きが出るのは確かです。
抑えるべき点を抑えて年収交渉に臨んでいきましょう!
未来ビジョンを想像させる年収交渉
年収交渉で重要なことは、相手に未来を想像させることです。その上で、この会社にとってあなたは必要な存在だ!と思わせるかどうかにかかっています。
その時に必要なポイントは下記の3つです。
これは医療業界に限らない話ですが、会社は会社の利益に貢献できる人を優遇する傾向にあります。
専門医療機関連携薬局の要件の一つにがん患者に対する情報提供率が全患者の50%以上という項目があります。がん患者の情報提供(トレーシングレポートの提出)はハードルが高いのに、それも提出率も多く維持する必要があります。
きちんと実践できる旨、さらには外来がん治療専門薬剤師(BPACC)教育にも携わり、資格保有者の人数を増やしさらに会社の強みになるよう伝えていきましょう。
ただ、そもそも在宅専門の薬局や化学療法を行っている人が来局しない薬局だと資格を十分に発揮できない為、きちんと需要のある企業の目星をつけることが重要となります。
また、具体的な数字を出すと説得力を増すことが出来ます。
など具体的な数値や期間を伝えると、熱意だけでなく具体的な未来も想像させることが出来ます。
最終的にそれらを元にどれだけ点数を増やすことが出来、会社の利益に貢献できるかが重要です。
また、「年収=優秀な人材」では決してありませんが、市場価値としてとらえることは出来ます。
他社で提示された年収を伝えることで、年収交渉を有利に進める手段になります。
年収交渉で注意したいNGポイント
外来がん治療専門薬剤師(BPACC)はまちがいなく希少な資格です。そこに疑う余地はないでしょう。転職が有利に運ぶケースの方が断トツ多いです。
しかし、それを勘違いして分不相応の態度や条件の提示は絶対にしないようにしましょう。
例えば何が何でも600万円以上がよい!と考えてその条件を伝えたとしますが、基本的に年収600万円以上を無条件で出せる企業は多くないのが現実です。
薬剤師の市場価値を理解した上で、なおかつ自身が生活にゆとりが持てる金額を最低ラインとして希望を出す事が重要です。
まずは求人にヒットできなければ、年収交渉もできません。
年収550万円に落ちるけど、年間休日数が多くなった。年収交渉をしたら年収580万円まで上げることができた等の成功体験もあるため最低ラインの設定は非常に重要と言えます。
BPACC転職は人生を大きく変える
年々がん患者が増えたり、治療法や副作用の対策が煩雑化することがすでに予想されており、今後の外来がん治療専門薬剤師(BPACC)の市場価値は上がることでしょう。
大手であれば手当が熱く、現場での活躍が期待されるでしょうし、中小であればそれ以外に教育や仕組み作りにも大きく関与することが出来ます。
外来がん治療専門薬剤師(BPACC)の転職は想像しているより大きなキャリアプランの変化をもたらします。
自分がどのような仕事をしたいのか、やりがいは何かを振り返り大手or中小かの判断をして頂ければと思います!